やさしいIFRS:業績の読み間違いを防ぐには?-表示編

会計・財務
2018.08.07


本日は、IFRS財務諸表を利用する際に、「業績の読み間違い」を防ぐための留意点についてお話したいと思います。IFRSと日本基準の違いと言うと、”のれんの非償却”の問題等が浮かんでくる方もいらっしゃると思いますが、今回は会計処理ではなく、表示上の留意点についてのご説明です。

0.前提
IFRSの方が、日本基準よりも「表示」の自由度が大きいと言われます。
例えば、IFRSは営業利益や経常利益の表示を義務付けていません。また、特別損益の表示を禁止しています。背景には、”営業損益は、営業活動の性質を備えた項目を構成要素とする。”という考え方があります。原則主義と言われる所以です。

では、具体的留意点について見て行きましょう。

1.日本基準とは「営業利益」の内容が異なる。
0.でお話した通り、IFRSでは営業利益の表示が義務付けられてはいませんが、表示することはできます。そしてもし、IFRSで営業利益を表示しようとするならば、その金額は特別損益を控除した後の値でなければなりません。これに対して日本基準では、特別損益は独立表示されます。ここに、日本基準上の営業利益との差異が生じます。「IFRSの営業利益と日本基準の営業利益は内容が異なる。」のです。

2.企業から独自のKPIが提供される事がある。
とはいえ、日本基準と同じ『営業損益』という名称を使うわけですから、そのまま放置したのでは利用者に誤解が生じてしまう事にもなりかねません。読者に対して何等かの説明をしなければと思うのが企業というものでしょう。
こうした事もあり、IFRS版財務諸表で「営業損益を表示しない」事例や、「”独自のKPI(業績指標)」を提供する事例が見られるようになりました。少なからずの企業がこのような工夫をしています。
名称は、”コア営業利益” ”調整後営業利益” ”事業利益” ”EBITDA(※)”等、様々です。先にお話した”特別利益”以外にも調整が加えられている事があるため、利用者としてはどのような調整が加えられているのかを確認することが重要になってきます。企業にとっても利用者とのコミュニケーションに注意を払わなくてはなりません。
(※)EBITDA=Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization

3.持分法損益が営業損益の構成要素に含まれる事がある。
日本基準では持分法損益は営業外損益項目に載りますが、IFRSでは”企業グループの事業及び戦略の実施において不可欠かどうか”を判断した上で表示箇所を決定します。持分法適用会社がそのグループの事業展開に不可欠な企業なのであれば、営業損益の構成要素とするのがより適切な業績の説明をする事になるという考え方です。つまり、持分法損益については営業損益に含まれている場合と含まれていない場合の2パターン、もしくは分割計上されている場合がありますので、日本基準で作成された財務諸表と比較する場合には注意が必要です。

執筆:公認会計士 松橋香里
ルミナスコンサルティング株式会社IFRS関連業務(website)会計英語コーチング等により企業及び人材のグローバル化を支援しております。

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