改訂版CGSガイドラインで変わったこと

ガバナンス
2018.10.23



2018年9月20日にコーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(以下、CGSガイドライン)が改訂されました。ガイドラインは、我が国企業のコーポレートガバナンスの取組の深化を促す観点から、各企業において検討することが有益と考えられる事項を盛り込んだものです。

まず、CGSガイドラインの位置づけが、「持続的な成長、中長期的な企業価値向上を図る上で要となるもの(本文1.1)」であるという点を確認しておきたいと思います。つまり、ブレーキよりもアクセルという発想がベースになっているという事です。

◇形だけなら従わないほうがマシ?
最近では、コーポレートガバナンスコード(以下、CGコード)への企業の対応について、形式と実質のズレが問題視されています。CGコードが出来た当初、Comply or Explain というキャッチフレーズが話題になりました。その後の金融庁のフォローアップ会議の意見書でも、形式的にcomply(準拠)するよりも、explain(説明)すべきではないか。無理にコンプライして形式的な対応に終始するよりも、コンプライしない理由をエクスプレインしたほうが良いと思われるケースが多々あるとの指摘が出されています。

たしかに形だけ整えて終わりというのでは意味が無いですが、現状は形式から入り実質を深める過渡期にあるように肌感覚として感じています。

◇取締役会の在り方を二軸で整理、は実用性が高い
取締役会の役割を大きく分けると監督と業務執行の意思決定の2つがあります。CGSガイドラインでは、意思決定機能について、個別の業務執行の決定(マネジメント型かモニタリング型か)、CEOへの権限(集権か分権)かという二軸で捉え、個々の企業が自社の取締役会の役割・機能を決定する際の視点が図示されています。
いずれにせよ、監督機能を高めるための施策が求められる点は共通であり、本ガイドラインでも監督機能強化への取り組みを検討すべきであるとの提言がなされています。ただし監督さえしておけば足りるという事ではない点に注意が必要です。

役割・機能の点でどのような取締役会を目指すのかを各社が決定するという、一見当たり前の事を言っている様にも見えますが、これは実務上はとても有益であると感じます。
というのは、投資家や役員経験者の方々の意見を聞いてみるとわかるのですが、取締役会がどのような機能を果たすべきかの考え方が実に多様であるという現実があるからです。会社のスタンスをより明確化することで一定のコンセンサスがとれてくるでしょうし、そうすると各利害関係者の会社への関わり方も異なって来るでしょう。これは、社外取締役に期待する役割を果たしてもらう上でも重要であると考えます。

CGコードも原則主義をベースとしている点はIFRSと同様です。従って、詳細な規定の作成は趣旨に反する事にもなりかねません。ガイドライン作成当局の皆様はこの辺りのバランスにご苦労なさっているのではないでしょうか。

◇主な改訂点
以下が主な改訂点です(経済産業省ウェブサイトの内容を筆者要約)。

(1)社長・CEOの指名と後継者計画(新設)
・後継者計画の重要性、客観性・透明性を確保する意義について改めて整理。
・社長・CEOの後継者計画の策定・運用の視点を作成し、先進的な企業の取組事例を紹介。

(2)取締役会議長
・社外取締役などの非業務執行取締役が取締役会議長を務めることの意義を追記。
・上記のための環境整備を追記。

(3)指名委員会・報酬委員会の活用
・コード改訂を受け、委員会の構成については、社外取締役が原則であることを明確化。
・社外役員が過半数または同数であっても委員長が社外役員であるべきと追記。

(4)社外取締役の活用
・社外取締役が実質的な役割・機能を果たす上での資質や背景を追記。

(5) 相談役・顧問
・前社長・CEOを相談役・顧問とする場合の情報開示について追記。

参考文献:CGSガイドライン(改訂版

筆者:KM
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