今回は、マーケティング部門で働いていらっしゃったMさんのストーリーです。
Mさんは、マーケティングで著名な外資系企業に入社後、出産育児を契機に英語を学び、念願の希望セクションに異動。海外の上司や同僚とのコミュニケーションのコツから英語を活かしたプライベートの楽しみ方について伺いました。
Mさんのプロフィール
大学卒業後、マーケティングで有名な外資系メーカーに入社し宣伝部に所属。
その後、消費材系事業部への部署移動が叶いマーケティングに従事。主力商品のブランドマネージャーとして活躍。現在は新規セクションの立ち上げメンバーとして組織横断的な業務を担う。
念願を叶えるために英語を学ぶ。
L:本日はよろしくお願いします。たしかMさんは「危機感を感じて」英語を始められたというお話をなさっていらっしゃったように思いますが、具体的にはどのようなところに危機感を持たれたのでしょうか。
はい、入社して30歳になる手前で出産しまして、子供が3歳を過ぎた時にこれからのキャリアをどうしようかなと考えました。当時は別の部門で働いていましたが、弊社はKing of Marketingと言われているほどマーケティングで有名でしたので、やはりマーケティングに携わりたかったのです。
部署移動するためには海外から担当者が来て、その方達の前でプレゼンテーションをしなければならないのですが、当時の私はとても話ができるようなものではなかった。マーケティングにうつるためには英語が出来ないといけない、と思いまして英語を学びはじめました。当時の上司には異動したいという話をしていて、その時からは8,9年経っていましたが、異動が叶いました。
L:念願かなってのお仕事はいかがでしたか?
ビジネスプランの組み方が大変勉強になりました。特に“マーケティング”の使いこなし方とでもいいますでしょうか、内部要因、外部要因を分析し、課題を設定して、というところが徹底していまして。合宿をやって意見交換をして、徹底的に議論をしました。
ブランドマネージャーをやっていた時は、製造の担当者との打ち合わせのため、毎月工場に出張していました。子供が中学受験の直前の時、「今日は良いミーティングでした。お子さんのためにも(お母さんとしても)頑張ってください。」と言われて嬉しかったのをおぼえています。
L:とても良い関係の中でお仕事をしていらしたのですね。マーケティングのお仕事では英語を頻繁に使われたのですか?
ブランドマネージャーをやるようになってから増えましたね。海外の担当とのコミュニケ―ションやプレゼンテーションや、key account(主要な取引先)の担当が海外から来たときにビジネスの話をしたり。海外本社のマーケティングマネージャーが凡そ2ヶ月おきにアメリカから来ていたので、それに備えてプレゼンテーションのやり方を結構練習しました。
L:上達したと感じられたのはどのような時ですか?
プレゼンテーションをしている時に、聞き手の外国人から“Wow!”というポジティブな反応があった時ですね。外国人の上司や同僚が“Good Job”ですとか、今の表現良かったね、というようなことを言ってくれるのです。質疑応答して相手がClosingする(議論をしめくくる)時に、褒めてくださったり。良いプレゼンテーションだったといってもらえると「あぁわかってくれたのだ。」と嬉しいです。
L:プレゼンテーションで苦労なさったことはありますか?
どういう組立て方をしたら相手に響くのかがよくわからなかった時です。
起承転結と結論を先に持って来なさいという話があった位で。そのため、最初はストーリーを作るのに時間がかかりました。
L:なるほど、日本語でプレゼンテーションをする時と表現の仕方を変えていらっしゃいますか?
はい、カルチャーの違いは考えています。英語のほうが端的に言う様にしていますね。日本ではストレート過ぎてもいけない、という事でマイルドにいう事もありますが、それではかえって外国人にとっては誤解を産むという事があるじゃないですか?英語と日本語でダイレクトさの度合いを一緒にしていると、上手く伝わらないことがあります。
L:確かに日本語と英語の表現の使い分けはみなさん工夫なさるところですよね。
具体的に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
私の部署で担当していた製品の中に海外での販売に影響を及ぼす販路で売っていたものがありまして、割と売上があがっていたのですね。それが海外の担当の目に留まりまして。その販路で売っては困ると言われたのです。そのことについて、日本で日本人と話をするときには、「いやいや、こちらにも予算などいろいろあるんですよ」という話し方をしていましたが、外国人に対しては「冗談じゃない、うちの部署はこれが無くなったら死活問題だ」という強い言い方をしていました。私は日本人に近い性質なので、頑張ってストレートに言う様にしています。
L:そのような意識を持つに至ったのは何故でしょうか?
周りの人のプレゼンテーションを見ていて、“変えなければならない”と思ったのです。
L:会社の中でのコミュニケーションのとり方について、こういう点が良いと言う事がありましたらぜひご紹介下さい。
グローバル化の流れで日本単体ではなくAPAC(Asia-Pacific)単位で一緒に仕事をやっていこうという流れが加速されているのです。
そういうことで、最近はますます、グローバルに直接コミュニケーションする場が設けられるようになりました。社長が外国人なのですが、海外から幹部が来て、会社がこういう方向に進んでいくんだよと言う話をしてくれるのがありがたいですね。
個々人にもDevelopment Plan(キャリア開発計画)の作成が求められます。英語に関してもこのDevelopment Planに目標を組み込むことが求められていて、毎月自分の進捗を全員に向かって話さなければならないのです。
年齢やセクションに関係なく、英語をきちんとやっていますよとアピールしていかないと会社に残れないと思っています。
少し前までは外資系とはいえ終身雇用が当たり前だったのですが、本当に変わりました。今は会社の良い文化を残しながら、それを後輩に伝え、教え、引き継いでいこうと頑張っています。
L:Development Planに英語に関する目標を入れるというお話が出ましたが、学習することの意味をご自身の中でどのように位置付けていらっしゃいますか?
まず、長期レンジでのキャリアゴールとして、社内のbest practice(仕事を行うために最もよいやり方)を横展開してゆきたいと思っています。こうしたゴールを自分自身に設定したときに、英語が出来ないとチャンスが来たときにつかめないのです。
L:チャンスをつかんだという意味では先ほどのマーケティング部門への異動と通じるものがありますね。
外資系は女性が働きやすい?
L:外資系の企業を選ばれた理由、会社の制度や雰囲気についてお聞かせいただければと思います。
大学を卒業する時、女性が仕事を続けられる会社に入りたいと思っていまして。
たまたま雑誌で女性の活躍について考えている会社の記事を見たのです。男性と女性を区別をしていない話や、女性にも機会を与えている会社だよと言う話だったと思います。それが外資系の弊社でした。入ってみたらその通りで、ほんとうに出張にも行けるんだと思いました。制度も整っていまして、完全週休2日ですし、育児休暇を1年とれますし。
L:当時は育児休暇を1年とれるという会社が少なかったのですよね。
お子さんが小さいときに出張に行かれたという事ですが、お世話はどのようになさったのですか?
会社には娘が1歳になる何日か前に復帰しました。子供が成長する姿を自分で見る事が出来たのは良かったですが、1才位になると自我も出て来るし、自分のペースが通用しないので仕事よりも疲れて来るというのが正直なところでした。
当時は公立の保育園でも6時までに迎えにいかなければなりませんでした。
仕事を続けたいと思って、個人で目が届く人にみてもらいたいなと区役所に相談に行ったのですが、見当たらず。がっかりして帰ろうとしたら担当の方が追いかけて来て、本当は教えてはいけないんだけれど、こういう人がいるから行ってみてごらん。と一枚の紙を渡してくれたのです。もともと保母さんをやっていた方がご自宅で5,6人の子供を預かっているという事で。
親も遠くに住んでいて、と話をしていたので頑張りなさいという意味だったのかなと嬉しかったです。とてもありがたい事です。その方にお願いすることにしました。
私の母は専業主婦だったので、娘を預けるのはかわいそうだと言っていましたが、夫の両親は働いていた事もあり、仕事を続けなければいけないよと励ましてくれました。出張が重なった時には夫の両親がみてくれた事もあります。夫は子供の面倒をよく見る人で、私が出張でいなくても全く平気でした。相手の理解があってこそだと思います。
L:それを踏まえて今、頑張っている女性へのエールを。
いいパートナーを見つけなさいという事ですかね。
あとは一人で抱え込むなという事は、子育てをしていて仕事を続けようという人には言っています。時間にも肉体的にも限りがありますから、どうやってサポートしてくれる人を探すか。いろいろなところでつながりを創っていく事が大事だと思います。
仕事と育児、両立の秘訣
L:ご自身に必要なものをきちんと選んでいらっしゃるのですね。お仕事をつづけながら育児もなさり、そのうえ英語を学習しつづけられた理由について、何か秘訣があれば教えてください。
最初はマーケティングに移りたいという一心でした。今は続けてやっていないといろんな場面で支障をきたしそうだという気持ちです。
その時その時で立場は違っても、いつも目的意識をもっていました。やらざるを得ない要因があってそれが自分の動機付けになったという事だと思います。
レベルがあがってくると上達を感じにくくなっていくので、モチベーションを保つのがむずかしくなりますが、知り合いに65歳を過ぎていて働きながら英語学習を続けている女性がいて、その方の事が刺激になっています。良い先生から定期的にフィードバックをもらうというのも続けられた理由だと思います。ですから英語が出来る様になった今も、時間がある限り学習時間をとるようにしています。
英語が出来ると海外旅行の楽しみ方が変わる
L:最後にプライベートの旅行を楽しむという点から、英語が出来て良かったと感じる瞬間があれば教えてください。
私は基本的にツアー旅行が嫌いなんですよ。自分の関心あるものを時間をかけて見たいですので。ですから全て個人旅行で海外に行っているのですが、個人という事は何かあった時に全部自分で交渉しなければなりませんよね。英語は必須なんです。
たとえば現地でハプニングが起きたときですね。バスがなかなか来ないとか、飛行機が遅れているなどハプニングがあった時に英語を理解していないと動く事が出来ません。先日も予定のフライトが遅れたので現地に着いた時は真っ暗になっていて。道を聞きながら目的地までたどり着きました。
L:確かに海外では日本と違って交通機関が大幅に遅れることもありますね。ツアーでないにしても、英語が出来る人と行けばよいという意見もありそうですが。
英語が出来る人と行けばいいという事もあるかもしれませんが、弊社などのように長期休暇をとる機会がある場合、お休みが長いと一緒に行ける人がいないのです。人と一緒に行くことを待っているといつまでも行けない。先日は一人でヨーロッパに旅行してきました。
あとは海外に旅行に行く時に、何をモチベーションにするのかという事だと思いますね。
旅行での楽しみに食べる、見るという事があるのですが、有名なところに行って、美味しい食事をたべてという事であればツアーでも良いし、自分自身が英語が出来なくても良いかもしれません。自分で話してコミュニケーションをとる事が楽しいよと思う人は英語をやるものではないでしょうか?海外の人との輪が広がっていくという事は楽しいと思います。
L:今日は本当にありがとうございました。
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