アメリカの内部統制報告制度が厳しいと言われる理由

会計・財務
2018.10.10

今回は日米の内部統制報告制度を扱います。
アメリカの情報誌CFOでこのような記事を見かけました。2018年のコストコ(米国)の業績は好調で株価が20%上昇しましたが、一方で内部統制上の重要な不備が存在するとの発表を受けて株価が2.4%下落したそうです。

『Costco’s share price has increased by more than 20% so far in 2018 but it dipped 2.4% to $226.20 in the extended session Thursday as investors absorbed the news that the company it expects to report a material weakness in internal control in its upcoming annual report.』

これを見て驚いた方もいらっしゃると思います。日本でこの種のニュースが出る事は無きに等しいですから。

日本では内部統制に問題があると報告する企業はほとんど無い
そもそも、日本の内部統制報告制度(J-SOX)のもとで内部統制が機能していないと公表する上場企業は現状1%を下回ります。
そして内部統制が有効に機能していると表明した企業において後に不正などの不祥事が発覚した場合には、過年度分の内部統制報告書を訂正するという傾向があります(毎年50件程度)。当然ながら、形骸化ではないかと問題になっています。

アメリカの内部統制報告制度が厳しいと言われる理由
コストコ社が開示した情報にて不備の内容を確認すると、
『The weakness relates to general information technology controls in the areas of user access and program change-management over certain information technology systems that support the Company’s financial reporting processes. The access issues relate to the extent of privileges afforded users authorized to access company systems.As of the date of this release, there have been no misstatements identified in the financial statements as a result of these deficiencies, and the Company expects to timely file its Form 10-K.』

財務報告プロセスを支える特定のIT全般統制におけるアクセス権及びプログラム変更管理の領域にて脆弱性が発見されたようですね。アクセスの問題とは、アクセス権を持つユーザーに付与された権限の範囲に関するものでした。現時点での財務書類への影響はないとの事です。

中長期的な企業価値の観点から見れば、大きな粉飾の発覚等の問題が生じる可能性を未然に防ぐという意味で好ましいと考えられます。そして米国ではこうした内部統制の不備の開示によって株価が下落するという現実があります。開示する側としては緊張感を強いられますね。

適切な情報開示のために必要なこと
日本の内部統制報告制度に関しては、適切な開示を促すために制裁措置を発動すべきではないか等の論点がありますし、そういう方向での議論も大切かと思います。一方で、この記事を読み、プレッシャーや誘惑の中、短期的な株価上昇下落に一喜一憂しない経営者の資質、そして誠実性というものがやはり重要であると改めて感じました。

参考文献:Costco Wholesale Corporation Reports (Costco website)
Costco Warns of Material Weakness in Controls(CFO Octobe 5,2018)

筆者:KM
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