日経新聞に『M&A「のれん」費用計上の義務化検討 国際会計基準』との記事が出ていましたので、IASB議長のHans Hoogervorst氏のスピーチ原文を参照したところ、少々ニュアンスが異なる印象を受けましたので記載しました。
1. 経緯のまとめ
のれん償却については再検討しないと決定済みであったが、適用後のレビューにおいて現行の減損のみのアプローチの欠点(小さすぎる、遅すぎる)が明らかになり、投資家にとってより利用価値の高い情報を提供するため、のれん償却を含む包括的な分析をディスカッションペーパ(DP)に含める事にした。
下記の様にのれん償却を再導入すると言っている訳ではないと言って注意を促しています。
Before Japan puts out the flags, however, let me warn you that it is far from a foregone conclusion that this discussion paper will lead to a re-introduction of amortisation.
2. そもそものれんを非償却とした理由
・(定期)償却すると、のれんを償却すべき時期を客観的に判断することが不可能になるため、情報としての利用価値が非常に低いものとなる。
・のれんは必ずしも時間の経過とともに減少する資産ではない。多くの投資家が償却額を戻し入れて業績予想に用いており、GAAP外での測定をさせないようにする我々の努力を考えると、償却することは大きな進展にはならないだろう。
また、主要な会計上の変更を行う際は、費用便益分析を行う必要があるが、償却額の再導入がそのハードルをクリアするかはすぐには分からない。
(といって希望を持たせているようにも感じられますが、、、。)
3.結論??
しかし、この取り組みの成果がどんなものであろうとも、ステークホルダーが減損のみのアプローチ(償却しないという事)の欠点をよりよく理解できるような情報をDPで提供するべきである。
より良い代替案はないかもしれないが、その場合は、目を大きく開いて現行IFRS第3号の欠点を受け入れるべきである。DPが現行ののれん会計処理の落とし穴をよりよく認識する方向に導く場合、それ自体がポジティブな方向への進化だと言える。
However, whatever the outcome of this exercise will be, the discussion paper should serve to make our stakeholders better aware of the shortcomings of the impairment-only approach.
It may be that there is no better alternative, but in that case we should accept the current shortcomings of IFRS 3 with our eyes wide open. Should the discussion paper lead to better awareness of the possible pitfalls of current accounting for goodwill, this would in itself be a positive development.
個人的見解ですが、この問題にけりをつけるデッドラインが近づいてきたという事ではないでしょうか。IASBによる原文は Chairman’s speech:Japan and IFRS Standards (29 August 2018) をご参照ください。
執筆:公認会計士 松橋香里
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