Portland4:サステイナブルな社会を目指す未来のビジネス

マネジメント
2018.09.18

日本の外から日本を見つめなおす。今回はサステイナブルなビジネスについてお話します。

Forbesが毎年発表する”The Best Places for Business and Careers”においてポートランドは年々順位をあげ、2017年にはついに全米トップに躍り出ました。優遇税制、消費税非課税、低い法人所得税率によって、ビジネスと生活のコストは非常に低いものとなっています。
そうであっても市の財政は黒字、インフラ整備についての様々な取り組みがなされています。今回は詳細に触れる事はしませんが、ご興味あるかたはこちら(市の財務情報)をご参照ください。Audit Report内に記載されている財務情報がよくまとまっていてわかりやすいです。

◆環境との共生、地産地消の具体例
ここからはミクロの視点にたち、具体的にどのような取り組みがなされているのか、私が脚を使って入手した情報の一部をご紹介したいと思います。

(1)建築物の再利用- ACE HOTEL
言わずと知れた有名なホテルです。こちらの建物は何とおおよそ築90年のホテルをリノベーションしたものです。superior deluxeで1泊3万円強程度だと記憶しています。室内は年季は入っていたものの清潔でありました。お好きな方にはたまらないでしょう。写真は1階ロビーの様子です。こちらも雑誌などでご存知の方は多いと思いますが、宿泊者以外の方も利用できる有料カフェ併設のスペースです。お仕事をしている方も多く見られました。エースホテルはつい先日、2019年に日本(京都)に進出することを発表しました。日本ではどのような趣で仕立てられるのかが楽しみです。




(2)地域密着の店舗経営 – POWELL’s BOOKS
こちらは地元密着型の書店。独立した書店としては世界最大規模で、出版不況と言われるアメリカで売上が全米TOP10に入る書店として知られています。新書と古書を同じ棚に並べて販売したことが成功のきっかけと言われていますが、実際に訪問してみると、オリジナルの文具やグッズの販売、陳列の仕方も工夫し、カフェにも力を入れていることがわかりました。日本でも類似のコンセプトを取り入れているお店がいくつか思い当たります。内部は渋谷の東急ハンズのような螺旋階段状のつくりになっています。



夕暮れ時。夜遅くまで営業しています。さながら図書館のよう。




(3)地産地消、生産者育成の場‐ファーマーズマーケット
ファーマーズマーケットは今や日本全国で行われていますので、さして珍しくないと思われるかもしれませんが、総じて日本のそれとは開催目的が全く異なります。
地元の農家が消費者に直接販売する場であり、出店条件は「小規模でも質が高いこと」。現地でお話を聞いたところ、3つの意味を持っているそうです。

・次世代の人材発掘、人材育成の場
・生産者支援の場:起業した農家を支援する場
・生産者と住民が直接触れ合う場

決して一過性のイベントや一時的な流行ではなく、日々の生活に密着したものだという事がわかりました。



ところで、ファーマーズマーケットは地元スーパーにとっての競合にならないのでしょうか?実際に同業のスモールビジネスを潰そうとする大手企業の話は存在します。少し気になりましたので聞いてみました。

農家をはじめとした少量かつ高品質の商品の造り手(起業家)をこの場で発掘し、スーパーの方から「自分の店で売らないか」と声をかけることが多々あるとの事でした。実際に出店した際には、大手がパッケージングや流通などのノウハウを提供し、スケールアップに協力する役割を担うこともあるのだそうです。
写真のJacobsen Saltはまさにその一例であり、日本でも食のセレクトショップなどで見かける事が多い商品です。



(4)共存共栄のための場‐フードカート
ポートランドには沢山のフードカートが集まるエリアがあります。
近隣にはランチを提供するレストランが沢山ありますが、レストランのオーナーはフードカートが増えたら困らないのでしょうか?同じくフードカートで有名なシアトルなどでは反対運動が起きた事もあると聞きます。住人の方に質問したところこのような答えが返ってきました。

「オーナーに聞いた事があるのですが、人が集まることで自分たちも恩恵を受けられると考えているのだそうです。確かに気分を変えて違うお店に行くこともあるでしょうし、雨の日にはレストランを利用したくなるでしょう。」

全体として小さな競争原理ではなく、大きな視点で捉え、共存共栄によって市場全体が続いてゆく仕組みが機能していると聞いて驚きました。

筆者:KM
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