Portland2:未来志向のポートランドが歴史を大事にする理由

マネジメント
2018.08.14


Portlandにて筆者撮影

今回はコミュニティに根差している共通の価値感、理念やミッションについてお話したいと思います。自らの属するコミュニティ(組織、団体)の価値観はどのようなものか?誰しもが一度は考えた事があるのではなでしょうか。

ポートランドの街を訪れ、実際に空間の中に身を置いてみてまず感じたのは、とにかく「コンパクト」だという事。それもそのはず、1ブロックの一辺の長さがアメリカの標準的なサイズの半分(61m)に設計されています。道路幅も20mと狭く感じられます。1マイル(1.6km)を20で割り、道路と合わせて1辺を80mとなるように設計したのだそうです。なるほど、これなら歩いて移動することも楽です。


Portlandにて筆者撮影

街中に出て現地に住む方にガイドしていただいていると、突然こんな質問をされました。
皆さんも一緒に考えてみてください。

このあたり一帯の建物では、一階は商業施設でなければならないと定められています。どのような理由によると思われますか?

私は防犯のためではないかと答えましたが、ガイド氏からこの様な説明がありました。
「1つの建物に様々な要素を入れることで、24時間誰かが利用している状態を保つ事が出来る。そして、人に見守られている街は綺麗になる。こうした考えのもとに街づくりが行われています。」

確かにそのエリアには写真のような高層の住居が多く、住民の多くは日中は仕事に出ているためビルの稼働状況が低下する。そこに商業施設が入居すれば人が訪れ稼働があがる。多様な人が行き来することは場を風通しがよくクリーンにする面があります。


Portlandにて筆者撮影

また、ある日はパール地区-Pearl District-を訪れました。パール地区はもともとは古い倉庫街。目の前にはアメリカの倉庫街と聞いてイメージするそのままの風景が広がっていました。近年ではこの元倉庫街を利用した起業支援がおこなわれており、センスの良い個性的な品物を扱う店舗も増えつつあります。


Portlandにて筆者撮影

こちらのかなり年季が入ったビルは現在は複合商業施設として利用されています。アウトドア製品で日本でも有名なパタゴニアも入居しています。

私は質問しました。「新しく建てなおしたほうが安あがりでしょう?
古くなったら壊し、新しく建設する代わりに古いビルを修繕して使う。たとえその方がコストがかかっても。確かに日本でもリノベーション案件は見られますがだいぶ様子が異なります。ここまでの事が実現できる理由は何故だろう?と感じたのです。

すると、このような答えが返ってきました。

「壊してしまうと建物のみならず、長年かけて培われたこの町の文化や歴史までもが失われてしまうではないですか。」

街の文化…。私は以前、日本を訪れた外国人からこのような事を言われたことを思い出していました。
『日本の街並みの魅力は小さな建物がごちゃごちゃと並んでいて可愛らしいところなのに、最近の日本の街並みを見ると、欧米を真似たつくりに変えようとしているように見えます。何故ですか?』

筆者:KM
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