グローバルに働くということ(後編)

インタビュー
2019.06.17



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外資系企業を渡り歩く
K:その後は海外駐在での経験を活かすため、外資系に転職なさったのですよね。

T:はい、アメリカのメーカーの日本法人に経理課長として入社しました。
海外からの駐在員が一人もいなかったので、国内では英語を使う機会はなかったのですが、シンガポールやアジアパシフィックの拠点とメールや電話でのコミュニケーションをはかっていました。海外出張にも行きましたし。

同じ“英語を使う”とはいっても、外資系企業の日本法人と日本企業の海外拠点とでは異なります。日本企業の海外拠点では、相手の外国人が気を遣ってわかりやすい英語で接してくれたのですが、外資系ではそうはいきません。ネイティブどうしのペースでの話についていくのがやっとでした。
そのような環境でしたが、幸い当時、直接接していた外国人上司・同僚の英語は概ねわかりやすく、自分でも勉強しましたので、英語力が上達しました。あと、上司は、日本人の帰国子女の方だったのですが、とてもきれいな聞き取りやすい英語を話されていたので、「こういうときはこんな風に言うんだ」ととても参考になりました。

今だからこそ言える『最初の印象が大事』ということ
T:外資系メーカーやマーケティングリサーチの会社の経理部門で外国人上司のもとでも働きました。会社はアメリカの会社とイギリスの会社だったのですが、国籍は、アメリカ人の他、シンガポール、ギリシャ、南アフリカなど様々でしたね。

K:外国語を使う上では恵まれた環境にいらっしゃった。

T:今から思うとそうなんですが、当時は辛い思いもしましたよ。

K:苦い経験をなさったことはありますか?

T:ある会社で、アメリカで行われた全社会議に出席することになりました。ソフトウェアベンダーの収益認識について議論が行われましたが、入社して間もなかったことと、英語がわからないこともあり黙っている状態でした。それで何も発言しないという印象を持たれてしまったのがつらかったです。最初の印象で話をしない人間だと思われてしまい、リカバーするのが大変でした。

K:その件があってから何かご自身に変化はありましたか?

T:必ず手をあげて話をするようにしました。たとえ日本で行われたとしても、全社会議ではいろいろな部署から人が集まってきます。この時、外国人どうしで普通に話されると英語のスピードに付いていけないなと感じる事もありました。2年ちょっとのニューヨーク駐在経験で何となくグローバル人材になった気になっていましたが、まだまだだ、英語のリスニング力をもっと高めたり、英語力だけでなくその場で話し合われる事について理解を深めないければ、と強く感じました。

たとえば、営業のトップが出て来てビジネスの話をすることがあります。そこに財務系の人間が出て行くという事は、予め内容、つまり商品のことや販売戦略を理解した上で話をしなければならないという事です。今では当たり前に感じる事ばかりですが、当時は認識が甘かったと思います。
日本語でもわかるわけがないような内容を、経理の英単語や経理の狭い知識でのりこえようとしていたのです。このような自身の経験を踏まえた上で、受講生の方にアドバイスをするようにしています。

K:では、最後にひとことお願いします。

T:私の場合、ニューヨーク駐在経験が仕事で使える英語を身に付けるきっかけになりました。おかげでその後、海外と関係する仕事についたり外資系企業に役職者として勤務したりと活躍できるフィールドが広がりました。
しかし、海外で生活するという様な事でなくても、仕事に役立つ情報を英語の本やインターネットで仕入れるということは日常的に行う事が出来ます。やはり新しい知識・考え方は海外から日本に輸入されることが多いですし、日本に入ってくる際に時間的な遅れが生じたり、ゆがんだ形で入ってきたり、或いはそもそも日本に入ってこなかったり、ということが意外にあるのです。

今は、電子書籍やオーディオブックであれば興味を感じたら一瞬で手に入ります。海外には、まだ日本語では出回っていない仕事に使えるネタは沢山転がっていそうな気がしています。

英語の学習については、学校英語、受験英語が役に立たないと感じる方も多いと思います。確かに受験英語は無駄なことも多いですが、基本的な文法、語彙はベースとしてご自身の中に残っているはずです。はじめは勇気が要ると思いますが、私自身がそうだったように、ともかく飛び込んでみて、持てる武器を総動員し、少しずつ矯正してゆきながら、小さな成功を積み重ねてゆけば、思ったより短期間で「自分にもできる」という実感を得ることができるでしょう。

<End>

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