2018年度上期 IFRSの動向『米国基準からの移行で時価総額の3分の1に増加』

会計・財務
2018.08.28

2018年上期のIFRSの動向について。
2018年上期においては、金融商品‐Financial Instrumentsや顧客との契約から生じる収益‐Revenue from Contracts with Customersの発効、概念フレームワークの改訂の完了などがありましたが、実務上の大きなトピックとして以下の2点を挙げたいと思います。

1.任意適用企業が200社を超え、時価総額の3分の1に
2.米国基準からIFRSへの移行企業の増加

1.任意適用企業が時価総額の約3分の1に

2018年7月の日本経済新聞にこのような記事が出ました。『IFRS任意適用企業は6月末時点で193社(東京証券取引所データ)だが、今後の変更予定を含めると6月末時点で204社と1年前より2割増。東京証券取引所の上場企業の6%で、大企業の採用が多いため株式の時価総額ではほぼ3分の1を占める。』(2018年7月:日本経済新聞)

まだ200社、という捉え方もできますが時価増額の3割というと割と多いと感じられるのではないでしょうか?今回は、2018年上期にIFRSに移行した企業について米国基準との関係に注目しながら傾向を分析しました。以下のとおり、2018年1~6月において30社がIFRSに移行しています。

・2019年3月期第1四半期より移行(16社
(1)日本ハム(2)日清食品ホールディングス(3)KeyHolder(4)住友金属鉱山 (5)アマダホールディングス(6)ミネベアミツミ(7)三菱電機(8)マキタ(9)ヒロセ電機(10)京セラ(11)三菱重工業(12)トヨタ合成(13)日本電信電話(NTT)(14)NTT都市開発(15)NTTドコモ(16)NTTデータ

・2018年3月期末より移行(10社
(1)ASJ(2)住友化学(3)住友ベークライト(4)第日本住友製薬(5)日医工(6)テルモ(7)沢井製薬(8)JVCケンウッド(9)エクセディ(10)CYBERDYNE

・2018年12月期第1四半期より移行(3社
(1)サッポロホールディングス(2)ライオン(3)クボタ

・2018年9月期第3四半期より移行(1社
(1)シェアリングテクノロジー


2.海外上場廃止時にIFRSへ移行する企業が目立つ


上記IFRS移行企業のうち、NTT、NTTドコモ、京セラ、マキタ、三菱電機、日本ハムは米国基準からの移行になります。NTT、NTTドコモ、京セラについては、米国上場廃止発表から程なくIFRSへの移行を表明しました(NTTは米国上場廃止を2017年4月に発表し、2018年6月からIFRSによる開示開始)。

かつては数多くの日本企業が海外市場に上場していたものですが、近年は減少傾向にあります。2013年にUBIC(現FRONTEO)が米国上場を果たしたのが久しぶりだとニュースになったのは記憶に新しいところでしょう。このような流れの中、米国基準を採用する企業数が減少しつつあるというのが近年の傾向です。


◆米国上場・SEC登録企業の多くは依然として米国基準を採用しているが・・・。

ところで“米国に上場している日本企業”には米国市場において「米国基準」のほか、「IFRS」に準拠することが認められています。
従来、IFRSを採用する場合には米国基準を採用した場合との差異調整表の作成が求められていましたが、2007年に手続きが緩和され、差異調整表は不要になりました。IFRS利用促進という点ではポジティブな動きですが、米国上場企業の多くは依然として米国基準を採用しています。
その理由として、IFRS準拠時の調整表作成が撤廃された2007年以前に既に上場した企業が現在も米国基準を採用し続けているということが挙げられます。

そして2018年8月現在、米国上場・SEC登録している日本企業はたった14社しかありません。これだけ米国上場企業が少ないと基準に精通する人材の確保が問題となります。今後新規に米国上場する場合、利便性を考えるとIFRSを採用する方向になっていくものと考えられます。
※注
米国上場:米国預託証券(ADR)をニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場すること。
ADR:米国以外の国で設立された企業が発行した株式を裏づけとした有価証券。
SEC登録:一般的に米国において公衆に対し募集又は販売される証券はSEC登録が義務付けられる。

一方、当該企業が日本市場にも上場している場合、日本の金融商品取引法に基づいて有価証券報告書を作成することになりますが、準拠する会計基準として、現状「IFRS」、「米国基準」、「日本基準」のいずれかの選択が認められています。
米国上場・SEC登録している日本企業14社の有価証券報告書の作成基準を調べてみたところ、米国基準8社、IFRS2社、日本基準4社という結果でした。


◆《米国上場・SEC登録企業が日米それぞれで採用する会計基準》

・日米とも米国基準 8社:
(1)ソニー(2)トヨタ自動車(3)キヤノン(4)野村ホールディングス(5)オリックス(6)インターネットイニシアティブ(7)オムロン(8)富士フィルムホールディングス

・日米ともIFRS 2社:
(1)本田技研工業(2)LINE

・米では米国基準、日では日本基準 3社:
(1)三菱UFJFG(2)みずほFG(3)FRONTEO

・米ではIFRS、日では日本基準 1社:
(1)三井住友FG

3.米国上場・SEC登録廃止後も米国基準を採用している企業が減少(わずか6社へ)

また、日本では米国上場・SEC登録を廃止した後も、米国基準で作成した連結財務諸表を日本の有価証券報告書に掲載することが認められています。事務手続の軽減等の理由により特例として認められている制度ですが、ここ数年、過去に米国基準・SEC登録を廃止した企業のIFRSへの移行が目立ちます。2018年上期はマキタが該当します。マキタは2013年に米国上場を廃止して以来、米国基準を貫いてきたわけです。

この結果、米国上場・SEC登録を廃止したにもかかわらず米国基準で有価証券報告書を作成し続けている企業は下記のわずか6社となりました(東芝は一旦、IFRSへの移行表明をしましたが、不適切会計事件により適用時期が未定となりました。)この傾向が続けば、いずれゼロになるでしょう。

  (1) TDK (2) クボタ (3) ワコールホールディングス (4) 小松製作所 (5)村田製作所 (6) 東芝

以上、2018年上期IFRSの動向でした。

執筆:公認会計士 松橋香里
ルミナスコンサルティング株式会社IFRS関連業務(website)会計英語コーチング等により企業及び人材のグローバル化を支援しております。

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