シリコンバレー市場LTSE創設をSECが承認

会計・財務
2019.05.13



米証券取引委員会(SEC)より新市場であるLTSEの創設を承認したとの発表がありました。報道によれば、今後LTSEは諸手続きを実施予定であり、今年後半には取引開始の準備が整うのではないかと言う事です。

アメリカには既にNYSE及びNASDAQという著名で大きな市場がありますが、シリコンバレーでも新しい市場を創ろうという動きがかねてより提唱されていました。
市場の名前は『The Long-Term Stock Exchange(LTSE)』、提唱者はPeter Thiel’s Founders FundやAndreessen Horowitzといった著名な起業家や投資家が経営するVC等です。

Peter Thiel:PayPal創業者。”ZEROtoONE”の著者
Andressen Horowitz:MarcAndressenとBen Horowitzが立ち上げた全米で最も大きなVCの一つ。当該VCに関しては、VCとしての地位を放棄し、財務アドバイザーとして登録中との報道もあり。Andreessen Horowitz, one of Silicon Valley’s most prominent tech investors, is renouncing its status as a venture-capital firm
Marc Andressen:NetScape創業者
Ben Horowitz:NetScapeを経てOpsware創業 ”HARD THINGS”の著者

LTSEのミッションとして、短期的利益に対するプレッシャーを減少させ、イノベーションが生まれる安定的環境を創出すること。長期的企業価値の向上を意図した投資を促進し、企業と投資家の利益に資すること。が挙げられています。

昨年の時点ではSECの承認が得られるかどうか疑問視されていました。一つの理由が、LTSEの提唱するルールが創業者(Founder)及び長期株主によるコントロールと議決権を強めるものである、という点。詳細は明らかにされていないようですが、今回の発表により一定の整理が出来たのかどうか。

記事中のインタビューによると、LTSEが提唱しているのは以下のような仕組みとの事。ちなみにこのインタビューに応えているLTSEのCEOであるEric Ries氏は、”The Lean Startup”の著者であります。

1.長期に株式を保有するほど議決権(voting rights)が増加
2.短期の業績非開示
3.経営幹部のボーナスと長期業績との連動性強化
4.コミュニティ内でのガバナンス

経営幹部に対しては長期業績と連動する報酬制度、投資家に対しては株式の保有期間に応じた議決権を与えることにより、長期的視点でのインセンティブを与える。Ries氏によると、ここで”長期”とは、10年単位を想定とのこと。
また、株式の長期保有は会社への理解を深め、会社により関心を持つようになる。こうした形でガバナンスをきかせるという意図のようです。
governance in the communityとおっしゃっていたのが思想を感じさせ印象に残りました。

それにしても、シリコンバレーはあたかも一つの小国家のようです。もともと”the United States”ですので違和感もありませんが。先日訪問したポートランドといい、西海岸では個性的な動きが目立ちます。皆様はこの動きをどのように捉えられますでしょうか。

参考資料:
 SEC approves new Silicon Valley stock exchange backed by Marc Andreessen, other tech heavyweights(CNBC)
LTSE website

筆者:KM
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