アドバイザーに必要な「論理に魂を宿す」ということ



今回は複眼的視点、について。

先日出席したイベントでタスカジ代表の和田幸子さんが『複眼的視点』についてお話なさっていました。

最初に、”タスカジ”とは和田さんが2013年に立ち上げた家事代行マッチングプラットフォームを提供する会社です。時代が変われば家族の形も変わる。家族の中で解決できない悩みを外部の助けを借りながらチームで解決していくことを通じ、家族の形を再定義することをミッションとして掲げていらっしゃいます。サービス利用者には家事からの解放の機会を、家政婦さんにはスキルアップによるキャリアの選択肢の多様化や経済的自立の機会を提供し、それが会社のためにもなるという、三方よしの考え方を基礎においた経営をなさっているのだそうです。
現在存在しないものを自身で作り上げるというのが「起業」ですが、一定の規模感を追求するところにまで会社を成長させる事は、特に女性起業家では過去にあまり例がありません。ぜひ頑張っていただきたいです。

今回、お話のなかで、「当事者意識」ということが採り上げられました。和田さんは一般ユーザーの方と同じ条件で自社サービスを利用なさっているとの事。そうすると、ユーザーとしてサービスの使い勝手の良さ、改善点、金額が高い、安いなどの意識が芽生える。サービスを利用している時の一瞬の気持ちの動きがマーケティングには大事だ、それが”当事者意識”というものであるという内容でした。サービス提供者としてだけでなくサービス利用者として会社を見る。複眼的な視点を持つという事は経営者に限らず、ビジネスパーソンとして必要なスキルです。

これを聞いて、まさに膝を打つ感覚でした。
私たちはクライアントに対して、コンサルティングというサービスを提供しています。具体的にそれは、たとえば経営企画や経理といった部門の代わりに問題点や課題を分析し、解決策を提示し、場合によっては自ら手を動かし一定の成果物を提供する行為です。

この時、アウトサイダーだからこそ見えるもの、語れる話があるのは事実です。
他方、経営分析と実際の経営は全くの別物です。把握した論点や提示した解決策がいかに正しいものだとしても、実行するとなると話は別。実行には別の困難を伴う事が多い。会社は外部からはわかり得ない様々な現実に囲まれていますし、何しろ多くの人に動いていただかなければなりません。
経営者はよく、「正論も大事」ということばを使いますが、実務をやり抜く事の難しさを象徴する言葉である、と私は受け止めています。正しいことをただロジカルに説明しても人は動かないし、組織も変わらない。変わらなければ会社は良くならない。

そしてコンサルティングだけをしていると、このことがなかなかわからない。
信念が強ければ強いほど、自身が良いと思うたった一つの方法を、強く主張しがちです。(もちろん、クライアント企業の会計基準違反、その他法令違反を発見した、というような場合は強く主張せねばならないのは言うまでもありませんが、今回はそのようなケースは想定していません。)

では、どのような言い方をすると事が良い方向に動いてゆくのか?
アクションを起こして欲しいのですから論理的に話をまとめる必要はあります。しかしながら、必要な情報のみを理路整然と並べたとしても、伝わる相手とそうではない相手がいます。事が経営となるとなおさらです。必要な事だけを淡々と述べるだけでは相手のやる気など引き出せるわけがありません。どのような伝え方をして、どのように関われば人が動くのか。やる気がでるのか。それを知る事がとても大事です。

まだまだ我々自身も、トライアンドエラーを繰り返している最中ではありますが、物事の裏側にまで思いを馳せ、理解してはじめてアドバイザーとしての仕事が全う出来る、そして成果も異なってくると信じています。


筆者:KM
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