非常時にリーダーがとるべき行動について

マネジメント
2020.04.27



新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言が出てから、経済活動にも影響が出ています。日々状況が変化していることは皆さんもお感じだと思いますし、未曾有の事態に不安に感じていらっしゃる事もいることでしょう。そこで事業を営んでいる方に少しでも参考にしていただければと思い、リーマンショックの際の経験を踏まえつつ、財務・経営の観点から私の見解を記しておきたいと思います。

キャッシュを確保する
まず、企業であれ個人事業であれ、又、どのような規模であろうと、キャッシュが尽きたら終わりです。事業継続はできないのです。どれだけ早くキャッシュを得るかは経営の基本ですが、非常時は通常にも増して時々刻々と状況が変化します。このような流動的な環境下での意思決定の遅れは命取りになります。ですから、将来キャッシュの見通しに細心の注意をはらってください。非上場企業やベンチャー企業は特に手元資金を厚めに持つことを意識すると良いでしょう(上場企業は他にも考慮しなければならない点があります。)。そのために、平時は現場に任せていたオペレーションにも上層部が踏み込み、直接に、そして正確な情報を入手してください。一度負のサイクルに陥ると、抜け出すのは極めて困難です。物事をよく見通せる人が迅速に行動しなければなりません。

正確な情報に基づき速やかに意思決定を行う
速やかに予算を修正します。いつもより頻繁に数字をアップデートし、結果を見て次のアクションを決めます。キャッシュフローには特に注意します。今まで以上に、売上高のみならず、代金回収や在庫現金化までのサイクル、そして損益分岐点についても注意をはらい、キャッシュのボトムが危険水域を下回らない様にコントロールします。どのような業種であっても同様です。

この時、注意しなければならないことがあります。見過ごされがちなのですが、コストを削減する場合には順番に注意してください。間違えると会社のレピュテーションにも重大な影響を及ぼします。また、取引先との関係を停止したり、解消したりする場合には、相手の事情にも配慮することも忘れないということ。ピンチの時に本性が出ると言います。危機的な状況で相手がどのように振る舞ったかは相手の心の中に深く刻まれます。そして何より、自分の記憶にも残ります。自分自身に対して恥ずかしくない行動をとること。回り回って自分にも帰って来ると考えたほうが良いでしょう。

将来予測を放棄しない
緊急事態宣言は1ヶ月ですが、経済への影響は1ヶ月では済まないでしょう。経済見通しについて様々な予測が出ていますが、現時点では一定の確度をもって先を見通すことには困難を伴います。

もしかすると、今のような不確実な状況下で、将来を見通すことに何の意味もないと感じることがあるかもしれません。本当にそうでしょうか?いつか必ず経済は回復します。その時に備え、今は最悪の事態を予想し、生き残り、来るべき時のために再び競争相手と戦う準備をしてください。苦しいのは競合企業も同じ、今こそシェアを奪う時期だと考える方もいらっしゃると思います。確かにそうすべきでしょう。自社に利益と十分なキャッシュ創出能力があるならば。自社にその力があるのかどうかを冷静に自ら評価しなければなりません。

”それは私たちには当てはまらない”、人は自らの力を過大評価しがちです。ですがこうした不透明な状況下では希望的観測を捨て、事業継続を一番に掲げ、本当に必要な活動以外は一旦停止すべきです。そして、必要不可欠と判断とした活動が滞りなく進むよう、細心の注意をはらいます。ご存知の通り、ビジネスは自社、自身の中だけでは完結しません。連鎖的につながっています。これまで時間をかけて作り上げて来たビジネスを縮小、停止することに抵抗があるという気持ちも理解できますが、そうすることで、筋肉質の会社となるのだと割り切らなければなりません。

社内コミュニケーションの頻度を高める
テレビやSNSなどのメディアを通じて毎日暗く悲しいニュースが流れて来ます。不安定な状況が長く続くと、人の気持ちが変化します。将来が不安になり、仕事が手に付かない。これからどうなってしまうのだろうか。私は何をすればよいのだろうか…。そう思う人が増えて行くでしょう。
現場で働く社員の中では、たわいもない話をして気を紛らわしたり、愚痴を言いあうといった行為が増えているかもしれません。結果、業務が滞ることもあるでしょう。一人ひとりがやる気を失っていないか、困っていないか、普段以上に気を配る必要があります。そうしていると、非常事態やプレッシャーに強い人と弱い人がいるのだと判ってきます。

このような時こそコミュニケーションには細心の注意をはらう事です。暗いメッセージばかり出してはいけません。変化する状況の中での会社の動き方をガラス張りにして伝えます。社外に対するのと同様に、社内に対しても透明性が必要です。複数のシナリオに基づいて、事業の目標はもちろん、会社の財務状況及び資源配分についてわかりやすく伝え、皆を勇気づけてください。

状況は時々刻々と変化しますので、いつもよりもコミュニケーションを頻繁に行います。現場の人間一人ひとりの行動が、会社にどのような結果をもたらすのかについて、各人に伝わっていると確信できるまで繰り返します。多くの場合、一度説明しただけでは有効ではなく、何度も何度も繰り返さなければ理解されないでしょう。「厳しい、難しい」と意気消沈するのではなく、「問題を解決する」と言う視点で前向きに話をしてください。

報酬・給与の削減は慎重に行う
給与や報酬は複雑で難解な問題です。ですが、状況が長引けば削減を検討しなければならなくなります。この時、拙速に行う事は禁物です。もし人員を削減するならば、その基準を明確にしなければなりません。最も重視すべきは、退職者も残る人も全員が“公正に扱われている”と感じる事です。そうでなければ全体の士気に影響が及びます。スピーディな判断が必要だからといって熟慮せずに行動すると、会社にとって必要な人を失い、先々苦労する、そのような事例を沢山みてきました。
報酬・給与を減らす場合には、制度の見直しが必要になるかもしれません。業績目標と連動する場合には、多くの場合それは達せられないでしょうし、固定額についても引き下げを検討しなければならない可能性があります。この場合にも、果たしてそれが総合的に見て、公正な評価、公正な制度といえるのか。繰り返し検討します。

ピンチはチャンスの発想をもつ
この状況からどうやって逃れよう、ではなく先を見据えてポジティブに行動すること。ここはバランスです。深刻になり過ぎてはいけませんが、根拠のない楽観主義や希望的観測に基づく行動は禁物です。足元を固めた上で将来展望を持ってください。この問題はすぐに収束するという人もいるかもしれませんが、真に受けてはいけません。とにかく今は、最悪の事態を想定した上で行動しなければ、自身だけでなく多くの人が犠牲になるのだ、そう思って行動します。
そしてこれは、ある意味チャンスでもあります。今までは考えもしなかったアイデアを出して行かねばなりません。コロナ後の世界が今とは異なるものになる事は確実でしょうが、それがどのようなものかは誰にもわからないのですから。
    
Kaori Matsuhashi

■  こちらの情報に基づき実際に行動に移される場合には、ご自身の判断と責任の下で行っていただきますようお願い致します。
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