やさしいIFRS:IFRS導入で会計は時価主義に変質したのか?

会計・財務
2018.09.27



最近また、新聞や雑誌でIFRSの話題になることが多くなっています。日本経済新聞にも度々登場しておりますね。そこで、IFRSについて誤解が生じがちな論点についてQ&A方式で解説しました。

Q:国際会計基準(IFRS)では、資産と負債について「公正価値(時価)」を評価基準としているのか?

A:NO
そのような事はありません。
棚卸資産、有形固定資産、無形資産は多くの場合、取得原価で評価します。投資不動産は取得原価または公正価値で評価します。また、金融商品については償却原価または公正価値のいずれかで評価しますが自由に決められる訳ではなく、厳格な判断基準が設けられています。

実際、「資産負債は公正価値を評価基準とする」というような表現は国際会計基準(IFRS)には存在しません。従って、IFRSでは測定方法として取得原価も時価も用いられており、いわゆる時価会計とは異なります。


Q.IFRSで資産が公正価値(時価)で評価される場合、それは「売ればいくらになるか」を意味するのか?

A:NO
資産評価の際には、売却したらいくらになるのかだけでなく、その資産を使用し続けたらどれ程の収入、すなわちキャッシュフローを生むのかも考慮します。これを使用価値といいます。
たとえば減損検討の場合はこのプロセスで資産を再評価し、使用価値によって資産を評価する実務が多く行われています。ですので、「IFRSでは売却したらいくらになるかで資産を評価する」「IFRSは時価主義」という表現は正しくありません。

以上、ご注意いただけたらと思います。
※2018年9月現在の会計基準等に基づきます。

筆者:公認会計士 松橋香里
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